他者論とホス狂い

 

私は長い期間日本暮らしてきた。

その中で、ホストクラブに行ったり、仲のいい友達が「ホス狂い」になっていく過程を目撃したりした。

「ホス狂い」とは、ホストクラブに通い、自分の好きなホストにお金を使い続けることをやめられない女性を指す。基本的に月に100万円以上をホストに使うので、風俗で働くようになってしまう。


ホス狂いになってしまった私の友達は、知り合った頃は普通の社会人だったが、私とホストクラブに何回か遊びに行ってからホストにハマり「ホス狂い」になってしまった。私は初回(最初の訪問の際にだけ60分1000円ほどで遊べる制度)のみを楽しみ終電で家に帰るタイプで、50店舗以上を経験しながら一度も3000円を超える金額を使ったことがない。友達も最初は私と一緒に初回で終わらせて家に帰っていたが、徐々にお金を使うことになり仕事も辞めてホストクラブに通うお金を稼ぎ始めた。

「100万円貸して」と言われた以降連絡は取っていないが、彼女がホストクラブで毎月100万円以上使っていることはSNSを通じて知ることができた。風俗で働いていることを暗示する話もたくさんあった。

しかし、彼女がお金を使ってもホストから愛されることはなかった。

これを私は昨日(2023.12.5)「現代社会論」で学んだ「他者論」と結び付けて考えたい。

まず、そのためにはシュッツによる「汝志向」と「彼ら志向」について考える必要がある。

汝志向とは、相手を「独自のあなた」として経験する態度を指す。その人が何を考えているかなどに関心が向けられていて、その人の役割よりはその人そのものを見ようとするのだ。

「彼ら志向」とは、相手を「類型的なあなた」として経験する態度を指す。相手を一つの「役割」として認識し、相手が考えていることに関心を向けたりはしない。例えば「コンビニ店員」「駅員」「ノートを見せてくれるクラスメイト」が該当する。


この理論に基づき、歌舞伎町の「ホス狂い」について考えてみた。「ホス狂い」はホストから汝志向を向けられることを求め、たくさんのお金を使い込むがその結果、ホストから彼ら志向の対象(金づる)になってしまったと考えることができると感じた。表面的には汝志向の対象として扱われ、心配されたりマメに連絡してもらえたりするが、その対価を払えなくなって金づるとしての役割を果たせなくなったら関係は切れてしまう。お金を使い続けそれを自分の「役割」であると言っていたり、自分を「エース」と言って自分をその役割として位置づけたりするホス狂いが多いことから、彼女たちも心の底では自分がホストの彼ら志向の対象であることを認識していると考えられる。しかし、それにもかかわらず彼女たちはホストの汝志向の対象になることを求め続けて、より高額のお酒を購買し、よりホストの彼ら志向の対象になっていくのが興味深いと感じた。


しかし、私は彼女たちを「被害者」だと思わない。

「ホス狂い」をホストに騙されて風俗で働かさせられた被害者とみなす見方が多いが、ホストが自分の職業を隠して近づいたわけでない限り、「ホス狂い」は被害者にはなれないというのが私の意見だ。

ホストという職業は女性からお金を取る職業であることは広く知られているし、ホストクラブでお酒の価格を隠したりだましたりすることもない。彼女たちは、ホストの仕事は女性にお金を使わせることであることを知り、その価格も知った上でホストクラブでお金を使い続けているのだ。



コメント

  1. 素晴らしいブログをありがとうございます。興味深い内容でした。自分もこういう哲学的な思考はすごくおもしろいと思います。誰でも自分の気になっている人に汝志向で思われたいと思いますので、その面の欲望が満たされていなかった場合、お金を使って、ホストのようなところで、実際は彼ら志向だったとしても、自分が他の人に大切に思われて、汝志向の対象に扱われて、精神的に満足できるのも仕方ないと思いますが、お金の使い過ぎだけは気をつけましょう。

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